言葉を繋ぐ(17)-8
【直訳】
子曰く、危うきものは、その位に安んずる者なり。亡ぶるものは、その存を保つ者なり。乱るるものは、その治を有(たも)つ者なり。この故に君子は安くして危うきを忘れず、存して亡ぶるを忘れず、治まりて乱るるを忘れず。ここをもって身安くして国家保つべきなり。
易に曰く、それ亡びなんそれ亡びなんとて、苞桑に繋(つな)ぐ、と。
【原文】
子曰、危者。安其位者也。亡者。保其存者也。亂者。有其治者也。是故君子安而不忘危。存而不忘亡、治而不忘亂。是以身安而國家可保也。
易曰、其亡其亡、繋于苞桑。
【私的解釈】
孔子は次のように書いている。変化の危うい人とは、その位に安心している者である。亡びる者は今あることを守ろうとするものである。乱れる者は、その治めることを保とうとするものである。このようなわけで、君子は安心しても危うさを忘れないで、あってもなくなることを忘れないで、治まっても乱れることを忘れない。これにより、身を安らかにして国家を保つべきである。
易にいう、それ亡びるぞ、それ亡びるぞと、桑のしっかりした根に繋ぐ、と。
孔子は具体的な状況にまで落とし込んで話してくれています。地位や自尊心が安泰な状況にある人ほど、それらを守ろうとして危うい。乱れているからこそ治めようとする。必ず反対の状況を心の隅においておけば真の安定、安泰となり、これを心に秘めながらバランスを取っていくべきであると言っているのでしょう。
易は、(17)からは三百八十六爻についてまで掘り下げています。
今回の「其亡其亡、繋于苞桑。」は天地否 の五爻にある「休否。大人吉。基亡基亡。繋于苞桑。」から引用されています。
つまり、天地否 は地天泰 という安定からは上下逆さまになったような状態。
五爻はその不安定な状態が極まる少し手前です。陽爻となっている五爻を陰爻に変えると火地晋 となります。本卦の向かう6つの方向の内の1つです。勢いよく出て行ける卦であり、その五爻は悔いのないように推し進めて良い時です。その為、ここからは安定や調和という文字が見えてきた状態ではありますが、易は変化の規則をあらわしている書である事を考えると、そんな時こそどのように調和していくのかこれからをしっかりと見つめて考えておきましょうと言ったところでしょうか。
災害を受けて復興し、順調に行き始めた時に大切な言葉になるでしょう。
自分に照らし合わせてみると、怪我をして治り始めた時、大病を患って健康に向かい始めた時です。
更に細かく考えてみると、身体は良くなってきているが根本的な悩みは解決していない状態。
なぜ天地否の五爻を示したのか。
大きな目線では上記のように考えていますが、火雷噬嗑の時のように様々な視点で考えて見る必要がありそうです。