徳の教え(72)道徳経下篇・徳経(35)
愛己(あいき)第七十二と言う副題がついています。
自分を愛する。
孫子兵法の有名な一節
かれを知りこれを知らば、百戦して殆うからず
知彼知此、百戦不殆
と同じ考えです。
何かを評価したり、変化させる為には、先ずは基準が必要で、基準が分からないまま動いてもそれはいたずらに動揺している事と余り変わりません。
以下鳳凰堂流解釈
天運、天の巡り、循環を軽視すれば、その循環による浮き沈みが分からないまま、様々な悪い事象に悩まされる事になります。
欲が果たせないとストレスになります。
いつもどこかへ行きたいと思っていると、
行けない事がストレスになります。
楽しんで仕事ができないと、今やっている仕事自身が嫌になります。
何事も楽しくやる事ができれば、他の人もそれに同調し、同じように楽しむ人ばかりになってきます。
このようなことから考えていくと、
思考を醸成した人、思慮深い人は、先ずただ自分の事を理解し、自分の心身を車のようにうまく運転できることに尽力し、それをひけらかしたりはしません。
自分を好きで仕方なくても、それが傲慢には繋がらず、自分を愛する事と同じように他人が好きになります。
それによって、ご縁がある人もまた、自分を好きになり、それと同じように他人が好きになります。
つまりは、先ずは自分を知り、そして自分を愛することから始める事が大切です。
【直訳】
民、威を畏(おそ)れざれば、すなわち大威(たいい)至らん。その居るところに狎(なる)ることなかれ、その生ずるところを厭(ふさ)ぐことなかれ。それただ厭がず、ここをもって厭がれず。ここをもって聖人は、自らを知りて自らを見(しめ)さず、自らを愛して自らを貴(たっ)とばず。故にかれを去りてこれを取る。
【原文】
民不畏威、則大威至矣。無狎其所居、無厭其所生。夫唯不厭、是以不厭。是以聖人、自知不自見、自愛不自貴。故去彼取此。