言葉を繋ぐ(19)-1
【直訳】
易の興(おこ)るや、それ中古においてするか。易を作る者は、それ憂患あるか。
この故に、履(り)は徳の基(もと)なり。謙は徳の柄(え)なり。復は徳の本(ほん)なり。恒は徳の固(こ)なり。損は徳の修(しゅう)なり。益は徳の裕(ゆう)なり。困は徳の弁(べん)なり。井は徳の地(ち)なり。巽は徳の制(さだ)なり。
【原文】
易之興也。其於中古乎。作易者其有憂患乎。
是故。履德之基也。謙德之柄也。復德之本也。恆德之固也。損德之脩也。益德之裕也。困德之辨也。井德之地也。巽德之制也。
【私的解釈】
易が盛んになったのは、中古においてであろう。易を作った人は、そもそも憂い悩みがあったのであろう。
このような理由から、
天沢履 [陽陽陰陽陽陽]は徳の基盤である。
地山謙 [陰陰陽陰陰陰]は徳の原動力である。
地雷復 [陽陰陰陰陰陰]は徳の始めである。
雷風恒 [陰陽陽陽陰陰]は徳を固める為の恒常性である。
山沢損 [陽陽陰陰陰陽]は徳の修めるもの(でこぼこをとり去るもの)である。
風雷益 [陽陰陰陰陽陽]は徳を豊かにするものである。
沢水困 [陰陽陰陽陽陰]は徳を区別するものである。
水風井 [陰陽陽陰陽陰]は徳の動かないなものである。
巽為風 [陰陽陽陰陽陽]は徳の定めである。
易が盛んになった理由の1つとしては、戦国時代という中古の時代の政治情勢の不安定さから来ているのではないかと孔子は考えていたようです。思えば、老子も人の世の余りの欲の深さに、涵谷関を出ようとした事ともリンクします。
道は地であり、徳は天です。自然界や人の目に見えない徳(陰徳)を実際に人の世の人間関係に波及させようとする気持ち、願いが易を盛んにしたと考えると、汚れた世界だからこそ、清いものを求めていたのかも知れません。
上記の卦の中で、天沢履 [陽陽陰陽陽陽]と地山謙 [陰陰陽陰陰陰]は
互いに転化した姿であり、大きな眼で見ると火と水になります。
地雷复 [陽陰陰陰陰陰]は全ての始まり。
それが、雷風恒 [陰陽陽陽陰陰]長い間続く為には、
山沢損 [陽陽陰陰陰陽]懸けた恩は水に流し、受けた恩は石に刻むように、損して得を取る事で、
風雷益 [陽陰陰陰陽陽]自分に益があるかもしれないけれど、もし自分に還らずとも、自分の大切な人、子、孫、しいては人類に益を及ぼす事になる。
裏返しの行動、言動をすれば沢水困 [陰陽陰陽陽陰]となるので、
静かにコツコツと自分の本分を守れば水風井 [陰陽陽陰陽陰]となり、
天から徳が流れるという条理、常に変化するという易の理に叶い、
巽為風 [陰陽陽陰陽陽]という柔軟で風のような生き方ができ、
天命を終えられると言っているのではないかと感じました。